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「薬学ニュース」vol.1 ノーベル賞と創薬研究

2025.03.01




けいやくにゅーすの記念すべき第1号の記事は、「薬学ニュース」からです。この企画は、薬学に関連したニュースを取り上げ、薬学部生の視点で知っておきたい知識をまとめたものです。薬学部で学ぶ内容と社会のつながりを知るきっかけになればと思います。「薬学ニュース」の第1回は昨年10月に発表されたノーベル賞についてです。




昨年のノーベル賞は、物理学賞、化学賞ともにAIが関連した研究が受賞となりました。今回の記事では、ノーベル化学賞に着目し、薬学との関わりについても紹介したいと思います。

2024年 は、デイビッド・ベイカー教授、デミス・ハサビス氏、ジョン・ジャンパー氏の3人がノーベル化学賞を受賞しました。ベイカー教授は計算によって新しいタンパク質を作る研究(①)、ハサビス氏とジャンパー氏は、アミノ酸配列からタンパク質の立体的な構造を予測する研究(②)で受賞しました。


①について

既に存在するタンパク質のデザインを変えることは今まで行われていたことでしたが、ベイカー教授はコンピュータープログラムを用いて全く新しく最初からデザインすることで、今までにない機能を持つタンパク質を作成しました。さらに、シミュレーションされたタンパク質を確かめるため、細菌にそのタンパク質を作らせ、解析したところほとんどデザイン通りのものが作られたことが確認されました。


②について


出典:Freepik. https://www.freepik.com
出典:Freepik. https://www.freepik.com

ハサビス氏がCEOを務めるGoogle Deepmindで開発されたAlphaFoldは、AIを用いてタンパク質の立体構造を素早く予測することを可能にしました。タンパク質はアミノ酸からなり(1次構造)、水素結合やジスルフィド結合などにより立体的な構造が形成されます。それまで、アミノ酸の配列からタンパク質の立体構造を予測することは非常に難しく、生物学の分野では50年来の課題でした。難しい課題が数分単位でできるようになりました。近年、私達の生活でも身近になってきたAIは化学の分野でも活用されていることが分かります。


また、昨年11月21日には、芝共立キャンパスでシンポジウムが行われ、ハサビス氏が登壇しました。事前に寄せられた質問をもとにパネルトークが行われました。薬学部ホームページにも記事が掲載されています。薬学部長主催 慶應医学賞サテライトシンポジウム2024 "AI-Driven Life Science and Drug Discovery"開催:ニュース:[慶應義塾大学 薬学部・薬学研究科]


これらの研究は、薬学とも大きな関わりがあります。

出典:厚生労働省. 医薬品産業の現状. https://www.mhlw.go.jp/content/10807000/001036959.pdf
出典:厚生労働省. 医薬品産業の現状. https://www.mhlw.go.jp/content/10807000/001036959.pdf

薬の開発にはもととなる化合物を探索するところから始まり、そのあとも治験により安全性と有効性を確認することが必要なため、10年以上の長い年月と莫大な費用を要します。成功確率も0.032%と非常に難易度が高くなっています。今回のタンパク質の設計と構造予測の技術によって、より速く有効な薬を開発することができると期待されており、世界の製薬企業は力を入れて取り組んでいます。



参考:Popular information. NobelPrize.org. Nobel Prize Outreach 2025. Wed. 5 Feb 2025. <https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2024/popular-information/>

厚生労働省. 医薬品産業の現状.

東京科学大学.2024年ノーベル化学賞を読み解く:計算でタンパク質の構造を予測し、新しいタンパク質を作る. https://www.isct.ac.jp/ja/news/5so8khsqwlzt



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「けいやくにゅーす」




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